KANON DE サザエさん
「何だ、このタイトルは…(汗)」
「祐一鈍いお〜。カノンのみんなでサザエさんをやってみようってことなんだよ〜」
「だからその意味が分かんねっての」
いきなりこんな始まりはどうかと思ったりもするが、とにかく始まるのである。
こうして水瀬家に集められたカノンの面々だったが、祐一以外は皆納得しているのはどういうことか。
「つまりは、みんなでサザエさんごっこをしてみようってことだな?」
「ごっことは失礼ね相沢君。核家族化が進み、家族の絆が失われようとしている今日、大家族の暖かさを
知って家族の大切さを再確認しようという目的があるんだから!」
祐一の言葉に反論する香里だが、どうも納得いかない祐一。
(今のもなんか思いつきな気がするんだよなぁ。つーか)
「なんかウラがあるとかいう話じゃないだろうな?」
祐一の言葉に内心ギクリとする面々。
なんだかんだで下心ありありの者もいるようだが、祐一が折れたことにより計画がポシャることは避けられたようだ。
「それで、まずは役柄決めからよね」
進行役を務めるのは当然香里。
「で、まずはサザエさん役だけど…」
「「「その前に、祐一(さん、くん)の役を決め(よう、ましょう)よ〜」」」
香里の提案に待ったを入れる名雪、栞、あゆ。
この時、祐一はこの企画の狙いを理解した。
「いや、美坂の役を決めてしまうってのも一つの手なんじゃないか?」
そして同時に北川の狙いも。
そして、こんなことに巻き込まれてしまった自分を思うと、どうにかして阻止したいと思うのが祐一という人間。
(俺がやらねばならない役は、マスオさん、ノリスケさん、ナミヘイ、カツオ、タラちゃん、イクラちゃんのどれか。
いや、タマという手も…いや、それだけは…つーかあいつ、オスだっけ、メスだっけ?)
悩む祐一。
「ねぇ祐一〜。何の役にするの〜?」
追い討ちをかける名雪。
(基本的に妻持ちはヤバイ。なら年少組か…?いや、奴らなら母親になって幼児プ…ゴホンゴホン。ならカツオか?
いや、そうなるとサザエさん役の奴に抵抗できない恐れがある。それをふまえて北川の件も考慮すると…)
「相沢くん、決まった?」
答えを求める香里。
「おぅ、決めたぞ。俺がなる役はな、ナミヘイだ!」
この瞬間、三人娘の希望する役はフネに決まった。が。
「でな、嫁さん役くらい俺が決めたいんだが、どうだ?」
祐一の意外な提案に不思議に思いつつも、特に反対理由もないので了承されることとなった。
「んじゃ発表するぞ。フネ役は…」
(くじなんかにならなくてよかったよ。ボクがメインヒロインなんだからね。当然ボクだよね、祐一くん)
(一緒に暮らして祐一のお嫁さんに一番近いのは私なんだお〜。二人にはやらないお〜!)
(祐一さんは、病弱な私を放ってはおけないはずですっ!信じてます、祐一さん!)
それぞれの思惑が交錯する中、祐一がその名を告げる。
「フネ役は香里に決定!!」
「「「「ちょ…」」」」
「わ、私ぃ〜〜〜〜〜!!!」
三人より誰より、一番驚いたのは香里だったようだ。
「ちょっ、相沢くん!?何で私なわけ!?」
「そうだよっ!何で香里さんなの!?」
「納得できません!祐一さん!」
「どういうことなんだお〜!邪夢食わすお祐一〜!」
「何故だ!何故いつもいつも俺の幸せを奪おうとする相沢!」
香里の言葉も意外に酷いが、三人娘アンド触覚男も容赦ない。
「まぁ待て。俺も色々考えたんだがこれがベストだという結論に至ったんだ。許せ」
(サザエさん一味でナミヘイはピラミッドの頂点。フネ以外に俺に意見できる者はいない!そして
そのフネを香里にしておけば北川の計画も阻止!まさに一石二鳥!俺の頭脳ってこえ〜!!)
心の中で高笑いする祐一だった。
「ま、まぁ、相沢くんがそうしろって言うんならしょうがないわよね。私たちも了承したんだし」
何故か顔を赤らめる香里。
(おろ?)
自らの誤算に気付く祐一。意外なところに伏兵発見、である。
(まぁいいか。他の奴よりはマシだろ…)
無理やり納得する祐一だったが、三人娘はそうはいかない。
「「「う〜〜〜〜っ!!」」」
不満でしょうがないといった感じだが、自分達も祐一が決定することに反対しなかった手前、文句も言えず、
悔しさのあまりぶっ倒れそうである。
「じ、じゃあ他の役を決めるわね。え〜と、サザエさん役だけど…」
香里が切り出すと、今まで無言だった舞が口を開く。
「佐祐理がサザエさん、私がマスオさんがいい」
「もう舞ったら♪」
「待て待て待てっ!お前ら!それはさすがにストレート過ぎるだろっ!!」
祐一の必死の抗議も彼女達には聞こえないようだ。
「子どもは二人がいい」
「あははーっ♪そうだね舞♪」
「もうタラちゃんがいるだろうがっ!勝手な家族計画立てんなっ!」
イッツマイウェイな二人に振り切られそうになりながらも、必死に食い下がる祐一。
だが、
「別にもう何でもいいお〜」
「さっさと終わればいいんだよ」
「お姉ちゃん巻きでお願い、巻きで」
最初の気合は何処へやら、すっかりやる気ナッシングな三人。
しかし、最初一番乗り気でなかった者がここへ来て一番必死というのは笑える話だ。
「笑えんわっ!!」
「はいはい、じゃあサザエさん夫婦はこの二人に決まり、と…。後は?誰か立候補は?」
地の文にまで反応してしまうほどにテンパっている祐一を完全に無視する形で会議は続く。
「じゃあ私がカツオやりますので、真琴がワカメでいいですか?」
これまた普段はおとなしい美汐が名乗りを上げる。
「美汐がカツオ!?またギャップの激しい…」
「いいのよ。メンバーが決まればそれで」
既に当初の大層な目的は忘れ去られ、皆の中でさっさと終わらせたいモードが満ち溢れていた。
しかし、やる気ナッシング三人娘の一人である名雪がボイコット解除をしたことから状況は変わり始める。
「ん〜、じゃあ私はタイコさんでいいお〜。ノリスケさんは北川くんね」
「え?え?マジで?俺なんかでいいの?水瀬♪」
「目がエロいお(怒)所詮は偽装結婚なんだお。影でナミヘイさんとムフフなんだお〜♪」
滅茶苦茶な設定を自分で作り出し、満足げに笑う名雪。
うちひしがれる北川を他所に、栞もボイコット解除宣言をする。
「じゃあ私はイクラちゃんでいいですよ♪イクラちゃんて実は女なんです。親子丼で楽しんでくださいねナミヘイさん♪」
「香里、何かもう…とんでもない方向へ話が逝ってるんだけど(汗)」
「分かってるわよ(汗)みんな、世間の常識というものを考えて行動してね(汗)」
危険な匂いを感じ取った二人は必死で抑えるが、暴走名雪&栞はやる気マンマンである。
そしてさらに追い討ちをかける出来事が.。
「あら?みんな揃ってどうしたの?」
「あ、お母さん♪みんなでサザエさんごっこしてるんだお〜」
部屋の掃除にでも来たのだろう、掃除機を持った秋子さんが部屋の入り口に立っていた。
「あら、楽しそうね♪私も混ぜてもらえないかしら?」
ナニを思ったか秋子さん参戦表明。
「え?いや、それは構いませんけど…。ほとんど役は決まってしまってて…」
「構いませんよ♪」
祐一の努力も虚しく、秋子さんは何故かやる気マンマンである。
「あ〜…え〜と、香里、役って何があるっけ?」
「え?え〜と…」
祐一と香里、壊れていない二人が考える。そして一つしかない答えに二人同時に行き着いた。
「「タラ……ちゃん…」」
ザ・ワールド。
「あら♪いいじゃないですか、タラちゃん♪それじゃ私はタラちゃんということで♪」
そして時は動き出す。
(秋子さんがタラちゃん…。萌え…。いや違うだろ(汗)俺の中での秋子さんはもっとアダルティーな…いや、問題は
そこではなくて…もうむしろ時よ止まったままでいてくれというか(泣)ん〜…でもイクラちゃんよりは幾分マシか?)
自分の思考すらよく分からなくなってしまった祐一だったが、所詮、どうあがいても秋子さんの意向を曲げることなど
できるはずがないのだ。
こうして始まるかに見えたサザエさんごっこだったが、実は一人あぶれた者がいた。
ボイコット解除を二人にされてしまい、あれよあれよという間に一人取り残されてしまった少女。
月宮あゆである。
「ちょ、ちょっと待って(汗)ボ、ボクまだ決まってないんだけど(汗)」
このままでは仲間はずれだと、何気に必死のあゆ。
今までのSSであまりいい思いをしたことがない故に、今回ばかりはと粘る。
「え?あ、そうね。でも何か役あったかな…」
あゆの気持ちを察した香里は何か役はないかと考えるが、さすがに出て来ない。
そしてやはり、悲劇は繰り返す。
これまでのストレスを晴らすときが来たとばかりに、邪悪な笑みを浮かべる祐一。
「大丈夫だあゆ。お前にピッタリの役がまだあるじゃないか」
「え?相沢くん、でも役ってもう全員が…」
「ほんとほんと!?よかったー(ホッ)で、ボクは何役?」
「ん?お前の役か?それはな…」
香里とあゆが見つめる中、ゆっくりと祐一の口が開く。
「タマだ」
ガーーーーーーーーーーン!!!
がっくりと膝を突くあゆ。
「ゆ、祐一くん…それ、人じゃ…(泣)」
「相沢くん、さすがにそれは…(汗)せめてハナザワさんとか…」
あゆと共に、香里も抗議するが、壊れた祐一が聞く耳持つはずもない。
「甘いぞ香里。それに今回は家族の大切さを知る企画だろう?部外者のハナザワさんの登場は無理があるだろ」
打ちひしがれるあゆ。
そして、話を聞いていたらしい秋子さんの一言がトドメを刺す。
「あら、あゆちゃんタマなんて可愛いわ♪ほら、おいでタマ〜♪」
誰も逆らえないこの人の言葉で、あゆの未来は閉ざされた…。
その後、水瀬家で行われたサザエさんごっこにおいて、一人ペットを演じるあゆは誰よりも輝いていたという…。
「タマ〜ごはんですよ〜♪」
「にゃ〜ん♪…ううっ(泣)」
続く!
後書き
祐一「ちょっと待てっ!上の続くってなんだ!?」
ペペ「読んで字の如く、続けるのだよ」
祐一「酔った勢いで書いてるから、んなこと言えんだよ!もっかい読み返してみろよ!」
ペペ「……いいもん。続けるつったら続けるもん」
祐一「サザエさんをか?」
ペペ「いや、さすがにそれは無理があるだろ(汗)別のテーマで」
祐一「勘弁してくれよ…(泣)」