「当機はこれより着陸態勢に入ります。シートベルトを…」

突然だがここは飛行機の中だ。

話の流れで分かってると思うが目的地はそう、歴史と文化の町、日光だ。

「皆様、右手に首都、アンカラが見えてまいりました」

酒盗の餡辛だ。ここは日本なのだ。


「なにブツブツ言ってるの相沢君。もうすぐ到着なんだから、ちゃんとシートベルト締めて」

隣で本を読んでいた香里が横目で俺を見る。

そう、今回は香里と二人で秘密の旅行。アバンチュールなのだ。


「ああ!早く着かないかしら♪調べたい遺跡の宝庫だわ♪」


あ、あばん…

「相沢君、ちゃんと作業着とスコップとへら、持ってきてるわよね?ガンガン働いてもらうんだからね♪」


「う、うわぁ〜ん!!!」


ええ、目的地はトルコ。

目的は発掘です(泣)





            美坂考古学研究所
                                 その二





そんなこんなで一行はイスタンブールへと到着した。

皆さん観光気分で出掛けて行くというのに、俺達は空港から出ることなくアンカラへの飛行機に乗り継ぎである。



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「ぐぁ…肩とか腰とかバリバリ痛いぞー!!」


トルコのどこまでも青い空に、不健康極まりない俺の叫びが響いた。
勿論両手は大空へ突き出す形だ


トルコの中心で絶望を叫ぶ。

てなわけでここはトルコの首都アンカラ。





「なぁ香里よ…。愚問かとは思うんだが観光とかそういうのは…」

「愚問ね」

ピシャリだ。


「・・・・・・。いや、まぁいいんだけどな」

「とはいえ、不慣れな土地で私達二人だけで行動するのも非効率的ね。と、いうわけで、ガイドは雇ってあるわ」

「へぇ。その人とはどこで待ち合わせてるんだ?」

「空港に来てくれるらしいから…あっ、いた!」

そう言って手を振る香里の目線を追う。

その先にはなんか純東アジア系の男が一人。

「おい待て香里」

そう言う俺に『ん?』といった顔を向ける香里。

「真剣に俺の質問に答えろ。ここはどこだ!?」

「トルコね」

「アイツは何人だ!!」

「中国人ね」

「そうか中国人なのか…ソコォー!!」

「ちょっ、いきなり大声出さないでよ!何?」

「普通ガイドつったら現地人だろうが!!」

「現地人よ」

「バッ、おまっ、そうじゃねーよ!もうちょっとなんつーか、トルコっぽくていいじゃねーか!」

「いいのよ、彼はあれでも在トルコ1年半なんだから」

「また微妙な数字だな〜…」

しかし俺の不安をよそに、謎の中国人に歩み寄る香里。

「こんにちわワンさん♪お久しぶりね♪」

そんな香里に、にこやかな笑顔で返す謎の中国人。

「こんにちわアル〜♪」




・・・・・・・・・・・・・・・・。



「おい香里っ!!こいつ最早中国人ですらね―ぞ!!」

「失礼アルねー。この人誰アルか?香里さん」

「ほんと、失礼よ相沢君。謝りなさい?」

おい香里、お前はその言葉使いになんの違和感も感じねぇのか(汗)


「中国人が本当に『アル』とか使うわきゃねーだろ!?よくてこいつは『なんちゃって』だ!!」

「そんなことないアル。ワタシ、日本でちゃんと勉強したネ。半年間」

「トルコ在住期間よりも微妙な数字だな〜(汗)つか、ほんとに勉強したんならアルなんて使うかよ!?」

「いっしょうけんめい勉強したよ〜。今でも持ち歩いて勉強してるネ。これワタシのバイブルよ」


そう言ってごそごそ鞄をまさぐる中国人。

しばらくして鞄から出したその右手には、しっかりと一冊の本が握られていた。





『キン○マン』





「香里さんゴメンこいつやっぱ使えるかも!!」

だから言ったでしょう?と香里。

…なんで勝ち誇ってんの?くそう、やっぱ納得いかねぇ。


「あ、ワンさん、そろそろ出発していいかな?今日中には着きたいのよ」

「了解アルよ〜」

そう言ってスタスタ歩いていく二人。


「あ、おい香里。ちなみに俺はまだ目的地を知らされてないんだが…。どこ行くの?」

すると香里は、必要以上の可愛い笑顔を浮かべてこう言った。

「カッパドキアよ♪」











カッパドキア。

アンカラから車で五時間ほど南へ行った距離にその街はある。

トルコの観光ツアーにも組みこまれるほどの観光地で、特に奇岩で有名だ。
ギョレメ国立公園などはビザンティン式の教会などが刳り抜いた岩の中に建てられており、
色鮮やかな壁画なんかも観光客の目を喜ばせてくれる…そうだ。


行ってねーからな。
全ては空港で密かに買ったガイドブックに載ってたのの受け売りだ。


今はガイドのラーメンマン…もとい、ワンさんが予約してくれていたというホテルに着き、チェックインしたところだ。

俺達が現地につく頃にはもう夕陽が眩しい時間帯になっていた。


取り敢えず部屋に入って一息つく。


「さて、明日から早速行動なんだけど…。相沢君も少しは知識を身に付けてほしいからね。ちょっと講義をしようと思います!」

「はぁ…まぁいいけどよ。まずは何からですか?」

「うん。明日行くところなんだけど。カイマクルの地下都市。これが目的地」


ふ〜ん。あれ?でも確かそれって…。

「おい香里。このガイドブックにも載ってるけど、そこ。観光地なんじゃねーのか?」

「まぁそうね。カイマクルの地下都市は4階までが一般公開されてる。私達も明日、そのツアーに参加する予定よ」


なんだ。そうなの?

「香里も人が悪いな〜。やっぱ観光さしてくれんじゃん♪……ぬぉ(汗)」

喜びも束の間、香里の貫くような視線に押し黙る。


「誰が観光つった…。まぁ取り敢えず地下4階までは他の参加者と共に行動するわ。でも、問題はそこから」

ヲイヲイ、なんか話がすげぇ嫌な方向に行ってる気がするぞ(汗)

「一応ね、カイマクルの地下都市は地下8階まであるらしいのよ。見学は4階までだけど。そこで4階まで来たら、みんなを見送ります」

「み、見送った後は…?」

すると香里は何当然のこと聞いてくんのよ?といった表情。

「地下5階に降りるわよ?」

はいきたはいきたはいきたっ!!

「ハイッハイッハイッハイッ!それ不法浸入ですから!!ね!?犯罪ですからそれ!」

「うっせぇなアマちゃんが…」

「うわ、なんかヤクザみたいですよ香里さん。いや、だっておかしいじゃん!!海外まで来て犯罪っておかしいじゃん!!ね!?」

「栄光を手にするには多少のリスクはつきものよ」

何の栄光だよ…。

「いや。まぁいい。それは置いといて。んじゃ、8階まで降りて発掘して終了、だな?」

「んーん♪」

おい。そこで笑顔で否定?否定の笑顔?否定的な笑顔?

どんなだよ?

「カッパドキアってさ、カイマクル以外も地下都市だらけなのよ。それで、その全てがどこかで繋がってるって話なの。だからカイマクルを入り口にして、まだ発掘されてないところをやろう!ってのが今回のプラン」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



「……なぁ」

「ん?」

「それな…?」

「うん」

「盗掘じゃん」

「んー、なんかイメージ悪いから却下」


「いやイメージとかの問題じゃねーよ!また犯罪じゃん!?俺トルコの牢屋入り?牢屋デビューがトルコ!?待てよそりゃあんまりってもんだよ!」

「何捕まる前提で話してんのよ。大丈夫よ」

「その根拠のない自信はどっから出てくんだよ!?お前、トルコ政府をナメてんのか!トルコはすげぇんだぞ!!絶対俺らなんか2分でぺちゃんこだぞ!!」

「根拠はあるわよ。ワンさんが一緒に来てくれるの。ね?大丈夫よ」

「ラーメンマンがどうしたーっ!!時代は拳法じゃないの!!ガンなの!ガン!分かる?バキューンのガンなの!ラーメンマンでも2秒で蜂の巣だぞ!?」

しかし俺の今世紀最大の剣幕にも香里は動じない。

つーか、欠伸とかしてやがるしこんちくしょう。


「大丈夫よ、カッパドキアの地下都市はそこの地理に詳しくなきゃ迷子になるくらい迷路になってるし、ものすごく広いんだから。私達3人が入って行ったって下水路にネズミが入ったのと同じようなモンよ」

「嫌な例えだなおい。さらに迷路なんて余計まずいじゃねーか。下手したら明日の朝陽が拝めねぇかもしんないだろ」

「ワンさんがその辺プロだから大丈夫。身の安全は保証するわ。どう?納得した?」

「しねーよ」

「よし!じゃあ明日早いしもう寝よっか♪さっさと出てけー」

「お前の耳はダックスフンドの耳か!ナチュラルに塞いでんのか!!おいこらちょっと聞け…」


どむ。

「おふっ……」

『ナニカ』の衝撃が俺のみぞおちを貫いたかと思うと、俺の体は自然と浮き上がり、素晴らしいスピードで開いたドアの向こうへ突進。

行こうぜ!ピリオドの向こうへ!!って感じだ。

直後、背中に大きな衝撃。

え?あれ?俺もしかして吹き飛ばされたの?何で?あ、香里の正拳?うそーマジで?ちょっとその力は尋常じゃないよ?


「押忍。……じゃね、おやすみ相沢君♪」

そう言ってドアを閉める香里。



「あ・・・・・・・・・ま・・・・・・・・・・・」


バタン。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・デウス・・・・・・・」


モーツァルト?





そのまま俺の意識は途切れた。











                            とーびーこんてにうど。



後崖


色々分かりにくくてすみません、とりあえず2話。

なんか俺、トリップキノコでも食べたんでしょうか。

ヤバイです、なんか。

ちなみに俺はトルコになんて行ったことないし、詳しいことは知らないのでツッコミはだめだぞー。


しかし、このままこのテンションで逝っていいんでしょうか…。

ダメだと思います。

はい、そうですね。

では3話でお会いしましょう、サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ。