そいつは突然現れた…



                金色のあゆ


「朝か…」

窓からもれる光りに目を細めながら呟く。

「今日は何しようか…昨日は何したっけ…?ああそうか…名雪と(以下自主規制)したっけか…あれはあれで…萌えだったな…」

本来なら学校へ行く時間だが今日は日曜日。よって、もう少しだけ惰眠をむさぼろ…

「ぅ〜ぐぅ〜ぅぅぅぅぅううううううう!!」
バリン!ずがべきどごがっしゃーーーーん!

清々しい朝の雰囲気をぶち壊す轟音と共にナニかが俺の部屋に衝突した。
ソレは見事に部屋の窓をブチ破り、床の上を転がってクローゼットに激突したところで漸くその動きを止める。

「いったぁ…勢いつけ過ぎちゃったよ。うぐぅ、服ボロボロ…ん?」
「……」
俺の視線に気がついたらしい。

「あ、祐一君おはよう!」
「……」
「実はね、今日はお願いがあって。んしょ…」
そう言って背中のリュックから馬鹿でかい本を取り出す。
「この本読んで。」
「帰れ」


そして俺は再び安らかな眠りについた。
おわり。

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・・

…その後俺はあゆを無視して家を出た。
現在地、商店街。

「祐一君、お願いだから本を…」
どがっ!どがっ!げしぃっ!
執拗に追ってくるあゆを撲殺しつつ、優雅な時間を楽しむ。
「あぁ〜今日はなんだかウキウキするなぁ。体調もすこぶる快調だ」


「相沢く〜ん!」
俺を呼ぶ声に振り返ると、香里が手を振りながら走り寄ってきていた。
やはり今日はいい日だと思わせる、香里の満面の笑顔。
せっかくだし香里とどっか行くのも悪くないな。

「よう香里。何か用か?」
「死ねーーーーーーーーーーーーっ!」
「なんじゃそりゃあ!」

とても通常の挨拶とは思えない返事を返してきた香里は、”どこからか”馬鹿でかい本を取り出した。

「!?姉妹揃って四次元かっ!」
「栞っ!」
姉の呼ぶ声にまたしても”どこからか”現れる栞。
ど○えもんも真っ青の荒唐無稽ぶり、四次元万歳!てな感じだ。


「相沢君、くらいなさいっ!ヴァニラ!!」
香里の持つ本が光ったかと思うと、栞のかざした手から白い光線状のものが飛び出した。
それは一直線に俺に向かって…って、やばい!


咄嗟に俺は手近にあるモノを引っつかみ、光線もどきをガードする。
「あばばばば!」
光線もどきは俺の盾の顔面にヒット。盾は情けない声を上げる。

「祐一君何するのっ!」
「すまん、あゆ。条件反射だ」
謝りながらあゆの顔についた光線もどきの残骸を見る。
ん?これはどっかで見た気が…

「てか、バニラアイス!?」
「ご名答。この呪文であなたを氷漬けにしてあげるわ、相沢君!」
ただのアイスでどうやって氷漬けにすんだ(汗)


しかしアイスまみれにされるのは勘弁だ。もしそんなことになったら秋子さんご立腹の上
某謎な劇物ぶちまけられて天国へ御招待だ。


…しかしなんなんだ、この現実離れした状況。
どうやら香里の持っている本に原因がありそうだが…。
って本!?

「あゆ!お前今朝本がどうとか言ってなかったか!?」
「あ、うん。この本に書いてある呪文を読んでボクと一緒に戦って欲しかったんだよ」
なるほど、そういうことか。
「って、やっぱりお前が原因かいっ!タ〜イラァンレイヴッ!!」
怒りの鉄拳炸裂。


だが、この期に及んで関係ないなどと言っても無意味なのは火を見るより明らか。
だって香里さん目がイッテらっしゃるし(汗)

「仕方ねぇ。あゆ、その本を貸せ!」
「祐一君、一緒に戦ってくれるの!?」
「かなり不本意だがもうやるしかない。という状況に追いこまれた(泣)」
「ありがとう!じゃ、お願い」

あゆから本を受け取る。仕方ねぇやってやるっ!
「いくぞ、あゆ!第一の術、キグル!!」


俺の呪文の詠唱と共に、あゆの体が眩しく輝く!


「……」
「……」
俺、香里ともに無言。


どんな呪文が出るかは俺だって予想していた。
栞の場合から考えても、おそらくあゆの場合、タイヤキに関する呪文であろうと。
いや、それは確かにあたっている。が、俺はタイヤキミサイルのようなものを想定していたのだ。
それが…それが……!


まさか、タイヤキの着ぐるみだなんて…!!


「あっはっはっ!相沢君、どうやら勝負あったようね!」
「くっ!」
勝ち誇る香里、跪く俺。


「祐一君勝負はこれからだよ!」
あゆ…そう言ってくれるのはありがたいが…
所詮着ぐるみ着ただけのお前がどんなに頑張ってもな…。


「哀れだ…(泣)」
見れば見るほど哀れなあゆの格好。
タイヤキのいわゆる”腹”の部分から手足が突き出ており、せびれの部分から頭が出ている。
仮面ノリダーとかに出てくるやられ役怪人みたいだ。



「せめて一撃で沈めてあげるわっ!」
余裕綽々といった表情で二発目の呪文を放つ香里。
放たれたバニラアイスはあゆへ向けて直進する。


「終わった…」
俺は諦めの声を上げる。が、あゆは何故か余裕の表情である。


そしてバニラがあゆに届く、というまさにその時。
「お口さん、オープン!!」
両手を掲げてあゆが叫ぶ!

もかっ!

間抜けな音と共にタイヤキ着ぐるみの口部分が開く!
ビ、ビームか!?メガ粒子砲なのか!?


「食べろ〜!」
ズザーッ!
マジコケじゃ馬鹿野郎。

しかし”タイヤキさん(あゆあゆ命名)”は栞が放ったバニラアイスを全てバキュームなさってしまった。


「なっ…!!」
初めて香里に驚愕の表情が浮かぶ。


「ニヤリ」
不敵に笑うあゆあゆ。
「残念だったね、栞ちゃん、香里さん。アイス攻撃はボクには効かないよ!タイヤキアイスにグレードアップするだけなんだよ!」
かなりアホな言い分だった。


「くっ!まだまだこれからよ!」
そう言った香里は次々とアイス弾を飛ばす。
しかし、タイヤキさんはことごとくそれをバキューム。



「「はぁはぁ…」」
このままでは勝負はつきそうになかった。

「仕方ないね…ほんとは奥の手として取っておきたかったんだけど使わせてもらうよ!」
自信たっぷりに叫ぶあゆ。

…まさかアレか!?今まで吸い取った分を放出するというやつか!
イケる!これはイケるぞ!

「突貫〜!!」
ウラキ少尉かっ!
…こいつわざと俺の予想を覆してんじゃねぇだろうな!?

「嫌っ!来ないでっ!」
しかし何故かあゆの意味不明な突貫攻撃に取り乱す香里。
やたらめったらにアイス玉を乱射する。

「捕えたよっ!」
気付けばあゆが香里に肉薄していた。

「自爆いっちょ入りま〜す!うっらぁぁぁあああ!!!」

ちゅどーん。


あゆの攻撃とは溜まりに溜まったタイヤキさん内部のアイスをぶちまけるというものだった。
…そりゃあ奥の手だろうよ(汗)
鉄○の○光、ドラ○ンボールのチャ○ズを思わせる漢気溢れる攻撃方法だぜ。

・・・・・・・・・・・
アイスに覆われていた視界が開けるとそこには倒れた美坂姉妹とタイヤキさんの残骸、
そして誇らしげに立つあゆの姿があった。

「祐一君、ボクやったよ!」
走り寄るあゆ。
「ああ…よくやったな…」
なんかもうどうでもよくなっていた。

「よ〜し!このままの勢いで優勝するよっ祐一君!」

そうか…優勝するのか…そりゃあすげぇな…

「っておい!まだこんなことしなきゃなんねぇのかよ!」
「当然だよ!そしてボクは魔界の王になるんだよ!」
平然と言ってのけやがりますか、この電波。
ここはビシッと俺はもう関わらんと言ってやらんと…

「なぁあゆ、俺は…」
「祐一君も頑張ってね!この本と一度契約すると『逃げられないらしい』から。
逃げようとすると『邪夢に呪われて死ぬ』んだって!怖いよねぇ」
「……」




…母さん、今日も空は高いです。
今、私はとんでもない状況に身を置いているわけなのですが。
今回、この一件の黒幕が分かった気がします。
でも、謎が解けて絶望するということも世の中には多々あるわけで。
もう、私は戻れないかもしれません。色んな意味で。
覚悟を決めようと思う、今日この頃です。
  追伸
お体には気をつけて。     祐一




                     続く?さぁ…





後書き

ペペ「ツッコミてぇっ!色んなとこにツッコミてぇっ!なんでアイスにそんなビビってんだよとかっ!
   そんな戦いになんでマジになんだよとかっ!思いっきりツッコミてぇっ!」

祐一「自分で書いたSSに突っ込み入れてりゃ世話ねぇな。」

ペペ「はい(泣)」

あゆ「コメディ書くの止めたら?」

祐一「それを言ったらSS書けないだろ。ジャンル問わず。」

ペペ「言いたい放題だな…。言い訳はできんが…。たまには励ましてくれ。」

祐一「頑張れ(アッサリ)」

ペペ「……」(泣き寝入り)

あゆ「こんなダメダメ作者だけど感想とかがあったら掲示板にでも書いていってあげてね」