『私はうねりだ。

うねってうねって
うねり続けて
のたうちまわって
波をつくって

そこにいる
お前等を
有無をいわさず
巻きこんでやる』     (『少女、ギターを弾く』より抜粋)


そう、私の中にもある。

うねり、迸り、爆発するもの。



そう、全てを白く、染めるもの。






              GROOVE!! 
                         VOL.1 お嬢様、ギターを弾く。



『行くぜ絶頂オーガズム〜〜〜〜〜〜〜♪』


「きゃ〜〜っ!!カッコイイ〜〜〜っ!!ね、ね、舞もそう思うよね!?」

「みまみま」

ここはいつもの踊り場。

んで、俺はいつものように昼飯をたかりに来てるわけだが…。

のっけからどうだ、この佐祐理さんのテンション(汗)

怒涛のようだ。

「あの〜、佐祐理さん、一体何があったんですか?」

恐る恐る聞いてみるがしかし、やはりと言うべきか、あははーっと佐祐理さんは応えない。

ダメだ、世界が違ってる(汗)

代わりに舞が一冊の本を投げてよこした。

「あん?『少女、ギターを弾く』?この漫画の主人公に惚れちまったわけか」

「はちみつくまさん」

やれやれ、佐祐理さんも結構子供だよな。

「で、どんな内容なん……ブッ!!」

特に興味もなくペラペラとページをめくってみたが、予想外の内容に思わず吹き出す。






エロ満開だった。






ごめんなさい、大人でした、佐祐理さん。

って、違う違う!!なんか色々違う!!

「さ、さささささささ佐祐理さんっ!?」


このエロ満開な漫画を、佐祐理お嬢様がお買いあそばされたっ!?
いや、それよりも、だ!!
お嬢様はこの主人公に心惹かれてらっしゃると言う。
てことはこの主人公の少女のように、佐祐理お嬢様も、その、お乱れあそばしたがっていらっしゃるっ!?




ごす。




「・・・・・・。最近キレが増したよな、チョップ」

「…練習してるから」

「…そうか。で、なんで俺は今チョッパられた(チョップされるの意)んだ?」

「祐一の目がいやらしかったから」

「…そうか。いやらしかったか」

「はちみつくまさん」


いやらしいことを考えていたからな。

「佐祐理が惹かれてるのは祐一が考えてそうなところじゃない」

そう言って舞はその漫画のとある1ページを見せる。

そこにはギターを持って恍惚としている少女が描かれていた。

「なるほど、ギターか…」

なるほど、と言ったが、佐祐理さんがギター?なんつーか似合いそうな似合わなそうな。

「祐一さん祐一さんっ!!どうです!?佐祐理、似合ってますか!?」

「いや〜…、ほうき持たれて似合うかって言われても返答に困りますよ」

「違いますよ〜。これは『ギター』ですっ!!」





ああ。



いたなー、中学ん時とかに、掃除時間にやる奴が。
でも、懐かしいけど、恥ずかしいですよ、佐祐理さん。

「あ〜…ま〜…似合ってるんじゃないですかねぇ〜」

自分の言葉ながら、心がこもってねぇなぁ、と思う。
しかし、そんな俺の言葉に顔を輝かせる佐祐理嬢。

「ほんとですかほんとですかっ!?きゃ〜っ、どうしよ〜っ!?」

いや、俺の中の貴方のイメージをどうしようですよ。
佐祐理さん、あなたってこんなきゃぴきゃぴでしたっけ?

「ギター、始めちゃおっかなぁ〜♪」

「あ〜…いいんじゃないっすかねぇ〜」

なんかもう、どうでもいいや。

「わ〜♪祐一さんに勧められると、俄然やる気になっちゃいましたよ〜♪」

え?

「あ、あの、佐祐理さん?俺は勧めてるわけでは、決してないですよ!?」

「またまた〜っ、祐一さんったら〜♪恥ずかしがらなくてもいいですよ〜♪」


いや違うって。つーかもし、佐祐理さんのお父上が厳格な方でいらっしゃり、娘がギターを始めたことを『不良だ!!』
とお嘆きあそばし、『勧めたのは誰だ!?』『祐一さんです〜♪』『血祭りじゃあ〜!!』なんてことになり、
黒服さんたちお供に連れて、冬の海に裸でダイブ、ウィズ、コンクリート!!なんてことになったら!?


「も、もしかすると、俺の健康状態その他諸々をふまえた上でもう一度熟考した場合、ギターを始めるのは必ずしも
得策ではない気も致してまいりまして、その…」

「大丈夫ですよ、祐一さん♪ちなみに、祐一さんはギターにはお詳しいですか?」


なにが『大丈夫』なんだ?少なくとも裸で冬の海、ウィズコンクリは逃れられるってことですか?


「え、ギターですか?あー…まぁほどほどには…」

「じゃ、決まりです♪放課後、楽器屋さんにご一緒していただけますね?」

「えーと、だから佐祐理さん、ギターの件はもう少し考えて…」

「ふぇ、祐一さん、佐祐理と一緒に出かけるのはお嫌ですか?」


なぁんて、涙を浮かべながら懇願してくる佐祐理さんです。

くっ!騙されるなっ!!これは嘘泣きだっ!!

「佐祐理、我侭ですけど、祐一さんと一緒にギターを見たいんです…」


そのギターってのがなかったら一発オーケーなんですが…ってウキャー!?

さっきまでのお目目ウルウルに加えて、両手を組まれて『お願い』ポーズ!!

た、たまらんばい…。

「わ、分かりました…」

って、ハッ!!

心が決まらんうちについオーケーしてしまった。
またか…俺…。

女の色気には一生勝てんらしい…(泣)



…まぁ、どっちにしても断るのは絶対不可能。
後ろの舞が木刀握り締めてたのが目の端っこに、だがはっきりと映っていたからな。


仕方ない、腹決めてギター見学ツアーといきますかね。














そして放課後。

俺達は一軒の楽器屋へと足を運んだ。

『折原楽器』
まぁ、どこにでもありそうな、小さな楽器屋だ。

店内に入ると、愛想の欠片もなさそうな店員が一人、レジに座っていた。
しっかし、だるそうに仕事する奴だな。

仕事する気あんの…

「くぁ…」

ボリボリ(ケツを掻く音)。

ふぅ〜…(タバコ吸う音)


「てめーは客が来てんのになんて態度だコラァ!!」

ついつい叫んでしまう俺だったが、店員は無反応だ。

「まぁまぁ祐一さん、ギターを探しましょう」

そう言って俺をなだめる佐祐理さん。

いやしかし、俺の腹の虫はそう簡単には…。

「…らっしゃい」

「遅いわっ!!」

「美人連れて、青春真っ盛りだな、少年。何かお探しで?」

「最初の台詞がそれかっ!!」

つ、疲れる店員だ…(汗)

「はぁ(汗)もーいーや。ちょっと店内見て回るけど、いいよな?」

「どうぞご自由に。いいのが見つかったら持って来な。試奏させてやっから」

「あいよ〜」

さて、改めて店内を見る。

「祐一さん祐一さん、ギターってこんなにたくさん種類があるんですね〜。佐祐理、びっくりしました」

確かに、店員はちとアレだが、店の規模の割には品揃えも豊富だし、きちんとメーカー別、価格別にまとめてある
みたいだ。ヴィンテージ物は普通のギターと分けてちゃんと湿度を調整できる部屋に保管してあるし、なかなか
良心的な店かな。

「んじゃ、まぁ見て回りますか。つっても、佐祐理さんの場合は初心者だし、(いつまで続くか分かんねぇし)取り敢えず
はこの辺の…2〜3万の奴から…」

「祐一さん祐一さん!!あの別の部屋みたいな所に飾ってあるギター、アレは何ですか!?」

高貴なもの同士はお互い感じ合う物があるのか、佐祐理さんはヴィンテージ物の部屋が気になったらしい。

「アレっすか。アレはヴィンテージ物…いわゆる昔のギターが置いてあるんですよ。ギターは湿気に弱いんで、
ああやって湿度を調整する部屋に入れてるんです。まぁ、そんな事までするだけあって、値段もかなり張りますから」

「へ〜…そうなんですかぁ〜。昔のギターさんなんですねぇ…」

やけに感心していらっしゃるようだ。

「そうなんです…と、佐祐理さん、これなんかどうです?3万ちょいだけど、一応フェンダーですし…って、アレ?」

佐祐理嬢は既にその場にいなかった。












そして、やはりと言うかなんというか、ヴィンテージ物の部屋にいた。

「佐祐理さ〜ん、そこにあるのは高いからさぁ…」

そう言いかけて思わず出掛かった言葉を飲み込む。

佐祐理さんがあまりにも真剣な顔をして立っていたからだ。

一本のギターの前に立ち、そこから一歩も離れようとしない。

「佐祐理さん、それ、気に入ったの?」

取り敢えず声を掛けてみる。

「あ、祐一さん。えと、気に入ったと言うか、何かこのギターから目が離せなくなっちゃって…」

やっぱり高貴なもの同士、惹かれ合うんだろうか。

「どれどれ…?お、ジャズマスターか。これは俺も弾いたことないなぁ。音も聞いたことないし」

「そうですか…」

ほけーっとした顔の佐祐理さん。これは相当気に入った顔だな。

「じゃ、これ、試奏してみる?」

「あ、は、はい!是非!」

頬を僅かに染めて、水のみ人形のようにコクコク頷く佐祐理さん(笑)

珍しく積極的だなぁ。
ま、取り敢えずあのヘタレ店員呼ばねぇとな。

「お〜い、店員さ〜ん!」

俺の呼び声に、相変わらずだるそうな表情で奥から出てくる店員。

「おう、いいの見つかったか?少年」

「あぁ。このジャズマスター、ちょっと弾かせてもらいたいんだけど」

俺がそう言うと、店員は「へぇ」という顔をした。

「若いのに渋い趣味してんな。あ〜、ちょっと待ってろ、アンプの準備するから」

そう言って何やらごそごそ始める。

その間も、当の佐祐理さんは目をキラキラさせていらっしゃる。

楽しみでたまらない、といった感じだ。

「おし、いいぜ。このイス使えや」

しばらくチューニング等をしていた店員だったが、おもむろにこっちを向き、ギターを俺に渡した。

「あ、じゃあ佐祐理さん、どうぞ」

そう言って渡そうとする俺だったが、

「あ…え!?いえ、佐祐理、まだ、よく分からないので。祐一さん、お手本見せてください」

何か、しどろもどろな佐祐理さん。

「何だ、もしかして、買うのこの子か?」

さも以外、といった感じで聞いてくる店員。

「ああ、俺はまぁ付き添いみたいなモンで」

「へぇ〜、この子が。で、お嬢さん、ギター経験はおありで?」

何故か店員は興味津々だ。

「あ、い、いえ…。しょ、初心者です…」

「お前なぁ、初心者さんにいきなりジャズマスターはどうなんだ?こりゃ結構クセあるからなぁ」

今度は俺に振る。

「別に俺が選んだわけじゃないっすよ。佐祐理さんが気に入ったみたいだったから」

「へぇ。こんだけあるギターんなかでこいつを選んだか。なかなか目利きじゃのぅ、お嬢さん。いい音出すぜぇ、こいつは」

「そ、そうなんですか!?」

何気に佐祐理さんも誇らしげだ。



「…つーかこれ、シングルコイルだ。ふ〜ん…まぁ弾いてみっか」

取り敢えずエフェクターなどは使わず、生のギターの音を。





ジャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!





「うおっ、音でかっ!!」

想像以上の音の大きさにちとビビる。それでも、しばらく弾いているうちに、このギターの良さが分かってきた。

「へぇ〜、結構芯の太い音が出るんだなぁ。低音とかはほんと太いな。フェンダーだから、もっとチャキチャキした音が
するのかと思ってたけど。まぁ、高音域は歯切れ良いか。でも、これの良さはやっぱ低音域かぁ?この暖かさの残る
太い音は癖になりそうだぜ〜♪」

「お前、何かフェンダー持ってんのか」

「え?ああ、一応ストラトを一本。でもはっきり言って全然違うな。別の会社のギターみたいだ」

「だろ?あぁ、何かエフェクター使って見るか?」

「あ〜、んじゃ、オーバードライブある?」

「おう、ちょっと待ってろ」

そう言って、奥に戻って行く店員。

「ね、ね、祐一さん、どうですか?そのギター!?」

待ちきれない感じの佐祐理さんが聞いてくる。

「うん、いい感じ。あと、エフェクトかけるとどうなるか見てみないとだから、もうちょい待ってくれる?」

「は、はい、もちろんです♪う〜…でも弾いてみたいっ!!」

子供みたいにはしゃいでいる佐祐理さん。

「おう、お待たせ」

店員が持ってきたのは、まぁ一般的な、BOSSのオーバードライブだ。

「よし、んじゃ…」

ドライブさせて弾く。

こりゃ…。

「いいな。ゴリゴリした感じがすげーいい!!へぇ〜、こんなギターがあるとはなぁ〜。相変わらず太い音だし。
グッジョブだぜこりゃあ!!」

「お前が気に入っても仕方ないだろが。それともお前もバンドでもやってて買いたいとかか?」

もっともなことを言う、店員。まぁ、確かにそうだが、いいモンはいいんだからいいじゃねぇか。

「昔はやってたけどな、バンド。つってもギターじゃねぇけど」

「へぇ、何やってたんだ?」

「タイコ」

「へぇ。希少種だな。しかしドラムじゃ、一人じゃ何も出来ねぇな(笑)それで、ギタリスト開発か?」

またまた勘違いしてんな。何でいつも俺率先型なんだ。

「別にそういうわけじゃ…」

「ゆ〜〜〜いちさ〜〜〜〜〜ん(泣)」

俺の声を遮る沈痛な叫び。

いかん、忘れてた。

隣を見ると、お嬢様が『もう我慢の限界!』って感じでギターにすがりついていた。

「はいはい、今変わるから(汗)」

ギターを佐祐理さんに渡す。

「どきどき…」

ギターを持ってポーズを取る佐祐理さん。
何か、ビシッと決まっていて、いい感じだ。

可愛さと格好良さが上手くミックスされた、新鮮な魅力。んん、何かいつもの佐祐理さんとは…って、

「佐祐理さん?弾いていいっすよ?」

いつまでも弾かない佐祐理さんに声をかける。

「あ、はい。え、えと…どやって弾くんでしたっけ?」



店員と二人でコケる。



「さっきアンタは何を見てたんやぁっ!!」

ちゃぶ台をひっくり返したい気分だぞ、オイ!!

「きゃあ〜っ!!す、すみませ〜ん!!」

「まぁまぁ、いいじゃねぇか。お前のへたくそな演奏見ても意味ねぇよ」

何故か割って入る店員。

「ま、取り敢えず、なんでもいいからよ。適当にその弦、かき鳴らしてみそ」

さらにアドバイスまで!!

ちょっと奥さん、何?あの男。
私の佐祐理お嬢を一人占めですのよっ!!
邪魔よ、邪魔!!

あんた、邪魔なのよっ!!

と、変な言葉遣いになってしまったが、なんか、一人取り残された気分だ。
しかも、へたくそ言うし。

しかも、佐祐理さんも素直に「はい!」とか言ってる始末。

やってらんねぇってん…





ギュワォォォォーーーーーーーーーーーーン!!!!!





「ぐああああっ!!!鼓膜がっ!!な、何だ!?」


何だ、とか言ったが、分かってるよ、佐祐理さんのギターだよ!!

そうだけど、幾ら何でもでかすぎだっ!!ボリュームいくつだよ!!

アンプの側にいた店員は気絶してっし(汗)

で、当の本人は…と。


「あ、あははは…あははははは…」


ウソ(汗)めっちゃご満悦(汗)あの子の耳は、おかしいのですか?



「あははーーーっ♪気持ちいいーーーっ!!すごいですよーーーっ!!ゆ〜〜い〜〜ちさ〜〜〜んっ!!」

そう言いながら大音量でジャカジャカジャカジャカ弾きまくる。


「…った………から…りあ…ず…え…そ…や……て…」


「えーーー?何て言ってるか佐祐理、分かんないですーーーーーー♪」

か…確信犯か?それとも、天然か?とにかく正にこの場は、地獄だ。

はや…く…止め…ないと…。

意識が…遠く…なるって…バカ…。




「あははははーーーーーーーっ♪」






ギュオォォーーーーーーーーーーーーーーーン!!!
ジャキジャキジャキジャキジャキジャキジャキ!!!

ジャジャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!!!!





「最…高っ♪」











…だから最初に言ったろ?

ギターは考えた方がいいって。










お嬢×ギター=トリップ、アンド、爆音=デンジャー・オブ・デッド。






「いぇいっ♪」






                                    続く




後書き

さて、久々の続き物となりました「GROOVE!!」ですが。

まぁ、明確な元ネタがあるわけでして、佐祐理さんが影響された漫画がそれであります。

バンド関係のSSは、一度は書こうと思ってましたが、まさかこんな感じで書くことになろうとは…(汗)

楽器を知らない人は、ちょっと知らない単語が出て来たりしますが、その辺はささっと流しちゃってください。

大した事じゃありませんから、そんなの。

ま、極力使わないようにはしますがー。

後、逆にお詳しい方。ペペはギター弾きではありませんので、はっきり言って知識はかなり怪しいです。

ので、全っ然違うよバカ!!てことも度々あるとは思いますが、その辺はささっと流しちゃってください。

大したことですが、ペペが大したことないのでしょうがないんです(泣)

一応俺はドラムやってたので、その辺は少しは詳しく書けるかもしれませんが…、でも多分書かないでしょう。

自分の知識がないと分かるのが怖いから。

ちなみに、今回登場の「ジャズマスター」ですが、これは単にペペが好きな元ナンバーガールの田淵ひさ子さんの
使用するギターがジャズマスターだったから。ええ、音とか好きなんですが、性能とかは全くわかりません!!

なので、その辺も突っ込みなしで。

でわでわ、「GROOVE!!」を、皆さんどうかよろしくお願いしまする〜(ペコリ)