「祐一くん、今回はFF]でいくらしいよ♪」

「前回あんな目にあったのに懲りねぇな、あゆ」

「大丈夫!今回は絶対乗り遅れないから(そのためにここ数日秘策を練ったんだよ)」

心の中でニヤリとするあゆだったが、今回こそ、その不幸な境遇から逃げ出せるのであろうか。

そして、本当に第2弾を書いてもいいんだろうか。

様々な思惑が交錯しながら、水瀬家ごっこの乱第2幕が始まる。




              KANON DE FF]




今日も今日とて水瀬家に集められたいつもの面々。

まぁ、いつものことながらの落ち着きぶりは大したものである。

そして、前回と何ら変わりない設定である。一つを除いては。


「秋子さん、今回はハナから出演ですか(汗)」

「ええ(ニッコリ)この間はとても楽しかったですから♪」

かなりありがたくないお言葉だが、女王がお気に召したとなれば企画を中止するわけにもいかず。


「で、まずは恒例の(?)役割決めなんだけど…」

今回も司会役は香里が務める。

「祐一はティーダに決まってるお!そして私がユウナ♪」

前回に引き続き、ごーいんぐまいうぇい且つ唯我独尊の名雪。

そして、それに当然反論する者がいるわけだが、今回、誰よりも早く口火を切った者がいた。

「せっかくごっこするんだから、希望制よりも役の適正を見るべきだよ!みんなで話し合って!」

いきなりのあゆの新提案。

しかし、あゆの提案にしてはなかなかまともであり、みんなで話し合えば誰かの独断が入ることもない。

まぁ、みんなが好き勝手言ってまとまらないという可能性はあるが、その時は…

「……」

無言で秋子さんを見る祐一。

どうしようもなければリーサルウェポンを持ち出すことも辞さない覚悟である。


しかし、いつになく反応が早かったあゆだが、まさか、今のが秘策というわけでは…。

(秘策成功!後はヒロインとしての要素満載のボクが選ばれるのを待つだけだね♪)

…浅はかな秘策であった。


「じゃあまず、簡単に決まりそうなティーダから決めよっか。相沢君でどう?」

「異議あ〜りっ!!」

北川の必死の抗議は完全無視。

「んじゃティーダは相沢君に決定、と。次はヒロインのユウナ役なんだけど…」

香里がそう言うと、ここぞとばかりにあゆが発言する。

「やっぱり明るい子がいいよ!それで、明るいんだけど、実は悲しい運命を背負ってる子、これで決まりだよ!」

(そしてその条件を満たすのはボクだけなんだよ!)

と、自信満々のあゆだったが、祐一たちは首をかしげる。

「決まりっつってもなぁ。明るいってことで舞と美汐は除くとしても…いて」

速攻で舞の馬場チョップが飛ぶ。

「…16文…」

違う。

「まぁ、だとしてもだ。他の奴は大体明るい性格に属すぞ。それに不幸を背負うって言ったら…」

「皆さん何かしら背負ってますね。私以外は」

と、秋子さん。


「つーわけだ。それだけじゃない何かが必要だろ」

あゆの論法、速攻撃破。

まぁ、あゆの作戦は決して間違ってなかったとは思うが、いかんせん相手が悪かったと言うべきか。

さながら不幸の見本市の如くに、揃いも揃ったりといったこの面子。

特に不幸というわけでもないのに名前が挙がらなかった北川だが。

これはまぁ、彼の日常が常に不幸だということで、OKなのだろう。

さて、どう切り返すか、あゆ。


「えと、えと…。そ、そうだ!ユウナはティーダよりちっちゃいよ!」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ポカーン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「…俺よかでかい女がここにいるか?あゆ」

「うっ(汗)」

てんで駄目でやんした。


「相沢君、ユウナより他のメンバーを決めたほうが早いと思うんだけど…」

願ってもない香里の提案。

「だな。それで行こう」


てなわけでメンバーとキャラクター全員を頭の中でくっつけてみる。


「ん〜、ムズいな〜。ルールーとアーロン役はピピッときたんだけどよ」

数分後、決めきれないといった感じで祐一が呟く。

「いいじゃない。二人も決まれば後がスムーズになるわ。で、誰?」

香里が助かったという感じで祐一を見る。


「ん?あ〜、まずはルールーな、これは香里だ。魔法使いって頭脳明晰って感じだろ?あと、怒らせると怖そう
ってのもなんとなく香里に合う…はうっ(汗)」

容赦ない香里のボディブローが祐一に突き刺さる。

「……(怒)まあいいわ。で、アーロンは?」

「あ、ああ…。アーロンは舞。剣使えるし、俺の剣の師匠だし」

そんなこと誰も知らないだろうと思うのだが、皆知ってるから不思議。

「そうね…。まぁいいんじゃない?川澄先輩他みんなが賛成するなら」

「舞、いいか?」

「はちみつくまさん。この剣で祐一を斬る…」

「趣旨分かってっか?舞(汗)」


そして香里の役が決まれば当然吼える奴がいるのである。

「相沢ぁぁぁあああ!!ワッカ!!俺をワッカにぃぃいいい!!!」

血の涙を流しながら訴える北川。

「待て待て待てっ!今回は立候補はなしだろ!?とはいえ…香里、どうする?」

さすがにかわいそうに見えたのか、お伺いを立てる祐一。

「…はぁ。まぁいいんじゃない?似てるとこあるし。バカっぽいとことか」


何気にきつい香里の言葉だったが、今回なんとか北川に春の風が吹いた。

「漸く三人決定か…。お、どうした、あゆ」

これまで自身の野望が打ち砕かれ、フジ○クンのように影の薄い存在となっていたあゆ。

だが、何を思いついたか、顔がまた燦然と輝き始めていたのだ。

「髪!髪だよ!!髪型だって考慮に入れていいよねっ!?」

「え?あ、あぁそりゃアリだと思うが…」

「ユウナって髪、肩までだよねっ!だから肩までの髪の人がいいと思うんだよ!」

なるほど、と皆頷く。そして。

「髪切ってくるおっ!!」

名雪が走る。

「いまさら遅い。諦めろ」

ギリギリで祐一が首をつかんで連れ戻す。

「と、すると…肩までの髪の人の中から選ぶのよね…」

言いながら周りを見回す香里。

(今度こそ決まりだよ!邪魔者(名雪)は追い出したし!さあ!早くボクの名を告げるんだよ!!)

そして、ついに祐一の口からヒロインの名が告げられた。

「んじゃ、やっぱこの面子じゃ栞じゃねーの?」

「ええーーーーーーーっ!!」

当然というか告げられた本人よりも驚きの声をあげるあゆ。

「理由は?」

(何でボクじゃなくてあんな貧乳小娘なんだよっ!!ユウナはもっとエレガントであるべきなんだよ!)


「あん?あぁ、だって今まで挙がったユウナの条件、プラス、ユウナってルールーの妹みたいなもんだったんだろ?
だったら、香里の妹である栞が一番条件に合う」

祐一、もっともな意見。

「くっ…」

何か言い返そうとするあゆだったが、栞の喜びの声に潰される。

「祐一さぁぁぁぁあああああん♪♪信じてましたぁぁぁああああ♪♪♪」

今回はおとなしめな栞だったが、当然、虎視眈々と狙ってはいたのだ。

「悔しいお〜(泣)明日の朝一番で髪切り行くお〜(泣)」

泣き崩れる名雪。



しかし、あゆの頭はもう切り替わっていた。

(チッ!でもまだ席はもう一つあるよ。2大ヒロインのリュックを頂けばまだチャンスアリだよっ!!)

「祐一くん、ボク、リュックがいいよ!」

当初の指名制もヒロインが決まればどうでもよくなるのがこの企画の慣例のようで。

しかし

「そりゃ無理だろ、あゆ。お前がさっき言ったこと考えりゃ、お前、リュックみたいな髪型無理じゃん」

あゆ、墓穴。

「あ、だったら、名雪なんかいいんじゃない?ほら、髪長いし」

泣き崩れたままの名雪を哀れに思ったか、香里が提案する。


「ん?そうだな。まぁ、俺なりに適任じゃないかと思える要素もあるし。名雪にすっか」

「ちょっと待って!!その要素って何なの!?」

もう必死のあゆ。

「……企業秘密だ。とにかくリュックは名雪に決定!」

つれない祐一の言葉。

あゆ撃沈。

とはいえ、祐一にも言えない理由があったのだ。


当初、祐一の頭に思い浮かんだのは、リュック、イコール秋子さんだった。

リュックはいろんなものを調合してモンスターを倒す道具を作る、イコール秋子さんの謎ジャム。

だが、推薦する時に言えるだろうか?

「あなたの作るジャムはモンスターくらい余裕で倒せます。だからリュックに適役です」

(言えるわけねぇ…)

というわけで、秋子さんの血を引く名雪なら、そういう才もあるだろうと考えた末の祐一の決断だった。

だが、そんなことあゆが知る由もなく。

「は…はは…何もかも…燃え尽きたよ…」

明日のジョー気分満載で灰になっていた。

しかし、無惨にもあゆ放置のまま会議続行。


「でも、ゲームのキャラクターってもういないわよね」

「キマリくらいだな」

二人で悩む。

と、今までは不参加気味だった佐祐理さんが声を掛けて来た。

「祐一さん祐一さん。敵役のキャラクターは駄目なんですか?」

「へ?いや、駄目ってことはないですけど…」

「「「ほんとですか!?」」」

三人が同時に声を上げる。

佐祐理さん、美汐、そして…秋子さん(汗)

「???…ちょっと待って。まず、佐祐理さんは誰がいいんです?」

「佐祐理はユウナレスカになりたいんです♪」

ブッ!!

吹き出す祐一と香里。

だが、祐一はこうも考えた。

(佐祐理さんがユウナレスカになる→俺がコスプレのごっこを提案→了承→佐祐理さんアノ衣装→激萌え!!)

「許可します!!」

「やったー♪」

しかし香里は不安そう。

「大丈夫なの?倉田先輩だけ許可ってのは無理よ。で、秋子さんがなりたいのって…想像付くでしょ!?」

「分かってる。だけどどうするんだ?俺はたとえ秋子さんだけが言って来たとしても止められない」

「「…………」」

つまり、もうどうしようもない、ということなのだ。

「で、天野は?何になりたいんだ?」

祐一が美汐に聞く。

「えっと、私はチョコボイーターがいいです」

「「は?」」

祐一アンド香里、唖然。

何故にそんなマイナーキャラを?

「…まぁいいけど。後悔しないか?」

祐一は優しさから言ったつもりだったのだが、美汐は気に食わなかったらしい。

「相沢さん、もしかしてチョコボイーターを馬鹿にしていませんか!?」

微妙に怒りが混じっている。

「あ〜、あはは(汗)いや、天野がそれでいいって言うなら俺は全然いいんだけど」


そして最後は秋子さん。

「祐一さん、私は…」

「シンですよね、分かりました」

即答の祐一にちょっとびっくりの秋子さん。

「よく分かりましたね♪顔に書いてありました?」

「え?ええ、まあ、それとなく…」

自分でも意味不明だと思う言い訳をする祐一。

(だって他に何になるって言うんです!?)

とは口が裂けても言えない。



「ねーねー祐一〜、真琴は?」

「あん?ああ。も〜お前キマリでいいや。元獣だしな」

速攻決定。



そして。

今回もやはり繰り返される悲劇。

ジョー状態からやっとこさ復帰したあゆ。

「あの〜、祐一くん。…ボクの…ボクの役は…?」

「おう、どうした○ジキクン?」

「誰だよそれはっ!!」

「ん?ナ○サワクンの間違いだったか?」

どっちでもいい。

「ボクの役は何っ!!」

「大丈夫だ、あゆ。とっておきをお前に残しておいた」

「ホントッ!?」

「ああ、FF]どころか、FFシリーズには欠かせないキャラだ」

ここまでくれば祐一が何をしようとしているかは察しが付くだろうが、


哀れ、あゆはあまりFFに関して詳しくはなかった。

「ホントホント!?ありがとう祐一くん!」

(このにわかFFファンが…)

心の中でほくそえむ祐一。

「んじゃ発表するぞ。あゆの役は…」


ゴクリとつばを飲み込むあゆ。




「チョコボ!」




ガーーーーーーーーーン!!




「ゆ、祐一くん…チョコボって…あの鳥みたいな奴だよね…」

「そうだ」

「一緒に戦ったりしないよね…」

「そうだ」

「……」

「そうだ」

「何も言ってないよ!てかまた家畜じゃないかっ!!うわ〜ん(号泣)」

「大丈夫だ、あゆ。今回はお前を引き立ててくれる奴がいる」

「ほ、ほんと?」

泣きながらも祐一を見つめるあゆ。

祐一は頷くと、美汐をあゆに紹介する。

「チョコボイーターさんだ」

ぺこり。



「う、うわぁぁぁぁぁあああん!!!」


あゆ、脱走。


しかし。

がしっ!

「え?」

「どうしたのあゆちゃん?みんなで一緒に遊ぶんでしょう?」

御大登場。

「で、でも秋子さん…ボク、チョコボなんだよ…(泣)」

「大丈夫よ♪可愛いわ♪」




そして今回もあゆは逃げ出せない。






    続いて怒涛の戦闘編へ!!

    後編を待て!!




  て、えぇぇぇえええええ!!!???





後書き

ペペ「続いちまった…」

祐一「続いちまったな…」

「「はぁ〜…」」

ペペ「そして更に続くんかいっ!!」

祐一「お前が続かせてんだろがっ!!」

ペペ「ほんの遊び心だったんだけどなぁ」

祐一「どうなっても知らんぞ」

ペペ「かなり怖いなこの後。どうする?」

祐一「知らねーよっ!!」

「「はぁ〜…」」