うさぎさん♪うさぎさん♪

私はそう口ずさみながら雪うさぎを作っていく。

楽しい思い出。母との思い出。

一緒に動物園へ行く

そのことをずっと楽しみにして

私は作る。

真っ赤なお目目の雪うさぎ


     動物園へ行こう!


「なんじゃこりゃあぁぁあ!!」
某祐作さんのような声を発して俺は玄関先に佇んでいた。
我が前方には、うさぎ。
玄関のドアを囲むように2メートル四方に渡って雪うさぎがひしめき合っていた。

「ま〜いっ!くおら舞っ!出てこ〜い!」
”これ”の犯人に間違いないと思われる人物の名を大声で呼ぶ。
ややあって俺に呼ばれた当人が顔を出す。

「祐一、ご近所迷惑」
「やかましいっ!お前の行為のほうがよっぽど迷惑だ!」
通路を完全に塞いでしまっているうさぎどものせいで、
俺達の部屋より奥に行くにはうさぎを踏み潰していくより他ないはずだが、なぜかその跡はない。
う〜む、ここの住人達はどうやって通過したんだ?

「ったく…雪うさぎを作るのをやめろとは言わんが、ドアの前に並べるのはよせ」
「祐一達に見せたかったから」
むぅ。そう言われると無下に怒るわけにもいかない。

しかし、このままでは家に入れないのも事実。
「舞、とりあえず横にどけるが、いいな?」
「駄目、まだ佐祐理に見せてない」
「イヤ、横にどけるだけだから。これじゃ家に入れないだろう?」
「駄目。この配置がベストだから。祐一はそこで待ってて」
ヲイ
それじゃ俺はこのままここで放置プレイですかい?
まだ肌寒い冬の季節、このままじゃ凍死しちまうよ(汗)
……。


結局俺が家に入れたのは佐祐理さんが帰って来た、2時間後のことだった(泣)


「はぁ…。本当に死ぬかと思ったぞ」
極寒の世界から漸く開放された俺は温かいお茶をいれてくれた佐祐理さんと
談笑中というわけである。

「あははーっ。祐一さん、お疲れ様です」
「しかし、舞の雪うさぎ好き(?)にも困ったもんだ。せめて時と場合と場所というものを考えてくれないと」
「そうですねぇ。でも佐祐理はそんな舞も好きなんですけど」
まぁ、俺も嫌ではないのだが。


俺達が一緒に暮らすようになって既に一年が過ぎようとしていた。
その間、舞の一風変わった所業に俺は何度か窮地に追いやられることがあったが、
今回の件も俺的にかなり追い詰められた。
例えるならソロモンを連邦に奪われたジオンといったところか。

「ところで舞は?」
家に入るなり小一時間ほど問い詰めてやろうと思っていたのだが、
当の本人は忽然と姿を消していた。
「あ、多分お風呂ですねー。さっきタオルをもってお風呂場に入っていきましたから」
むぅ、やはり逃げたか。
しかし、俺のわずかに見せた殺気を感じ取るとは奴め、なかなかできる。

「祐一」
「って、うおっ、舞!?」
突然の後ろからの声に思いっきりビビる俺。
くっ、修行がたりんぞ相沢祐一!
「で、なんだ?」
気持ちを落ち着けながら舞に聞く。
「突然だけど、実家に帰らせてもらうから」
なんだ、その嫁が離婚を迫るかのような台詞は。
「そっか、舞、もうすぐお母さんの誕生日だもんね。」
頷く舞。
なるほど、そういうことか。
「へぇ。まぁ気を付けて行って来い。ちゃんと親孝行しろよ」
またしても無言で頷くと、もう寝るから、と自分の部屋に戻って行った。

「それにしてもあいつも親思いなとこがあるんだな。誕生日に一緒に過ごそう、なんてさ」
「ふぇ?祐一さんは親の誕生日に何かしないんですか?」
さも舞の行為が当然と言うかのように聞いてくる。

俺の場合、ここ最近は親の誕生日に何かした、という記憶は無い。
というか、そんなことは考えつかなかった。
でも確かに…。

子供の頃は当然のようにしてきたことだった。
それが、時がたつにつれて親の誕生日に何かをする、ということはなくなっていった。
それはやっぱり悲しいことだと思う。
当たり前過ぎてつい忘れがちだけれど
いつも見守ってくれている家族。
その家族を思う気持ちは忘れてはいけないものだと思う

俺が忘れてしまっていた大切なものを思い出させてくれた舞や佐祐理さんには感謝だな。
俺も次の親の誕生日には何かプレゼントを送ろうか。

そんなことを考えながら夜は更けていく。





「あれ〜っ?もう、舞ったら肝心なもの忘れてる〜。」
次の日。
今日は日曜なのでリビングでゆっくり朝のコーヒーを楽しんでいたのだが、
佐祐理さんの呆れたような声に俺も何事かと足を運ぶ。

「どうしたんですか?佐祐理さん」
「あ、祐一さん。舞ったらお母さんにあげるはずのお土産忘れて行っちゃったんですよ〜」
どうしましょう、と困り顔の佐祐理さん。
「それなら俺が届けてやりますよ。舞の家なら俺も知ってるし」
「すいません。佐祐理はまだ洗い物とお洗濯しなきゃならないので。お願いします」
家事は当番制で、と決めたのだが、結局佐祐理さんやってしまうことが多い。
当の本人は楽しいですから、と言ってくれるのだが、さすがに心苦しい。
できないなりにもっと努力しないと。
というわけで、このくらいの雑用は俺がしてやらないとな。


舞の家は何度か行ったことがあるので迷うこともなく到着することが出来た。
呼び鈴を鳴らすと、は〜い、という女の人の声が聞こえ、すぐに扉が開いた。

「こんにちは。ご無沙汰してます」
「あら、祐一さん?ごめんなさい、舞は今ちょっと出掛けてるのよ」

舞のお母さん、綾子さんとは何度か会ったことがあり、結構親しくさせてもらっている。
届け物を渡せば帰る予定だったのだが、
綾子さんにあがっていくよう勧められたので、お言葉に甘えて舞を待たせてもらうことにした。
舞が買ったお土産だし、舞の手から渡した方がいいだろうしな。


「舞、祐一さん達に迷惑かけてません?あの子、ちょっと変わったところがあるから」
「そんなことないですよ。毎日楽しく過ごさせてもらってます」
死にかけたりもしてますけど。

「そう、よかった。あの子が友達と一緒に暮らすって言った時は本当にびっくりしたけど、
あの子も私が知らない間に成長してたのね〜。
祐一さん達と出会えて、本当、舞は変わったもの。祐一さん、ありがとう」
そう言って綾子さんは微笑む。
「いや、俺は何もしてないですから。変わったとするなら、それは舞の力ですよ」
本当にそう思う。

「ふふ。昔はあの子友達が出来なくて。私ももっと母親らしいことが出来れば良かったんだけど、
私も病気だったから舞をどこかに連れて行ったりする事も出来なかったし。
あの子動物が大好きでね。私の病気が治ったら一緒に動物園に行く約束をしてたんだけど
それも叶わずじまいで…。でも祐一さん達が連れて行ってくれたしね。
もう私が心配しなくても舞は寂しがらずに生きていける…」
そう言った綾子さんの顔は安心したような、少し寂しいような表情だった。

「そんなことはないと思いますけど。あ、そう言えば舞ってよく雪うさぎを作るんですよ。
前からそうだったんですか?」
俺の中のちょっとした疑問だった。
暇さえあれば雪うさぎを作る少女というのはあまり一般的とは言えないはずだ。

「あら、まだあの子作ってくれてるの?雪うさぎはね、随分前に私があの子に教えたものなの。
そう言えば昔二人で動物園に行こうとしてね。
私はもう長く生きられないと思ってたから最後にあの子の希望を叶えてあげたくて。
でもやっぱり無理でね。
そしたらあの子、雪うさぎをたくさん作って私に言ってくれたの。
『お母さん、動物園だよ』って。嬉しかったなぁ。
…ってごめんなさい、私ばっかり喋ってしまって」

「いえ…」
今の綾子さんの言葉に俺は舞が雪うさぎを作る理由が分かった気がした。
だが、俺は何をしてあげられるのだろう。
舞に。そしてその母に。



「ただいま」
綾子さんと話していると、舞が帰ってきた。
「よう、何処行ってたんだ?」
「祐一、どうしてここにいるの?」
「舞、その言い方は祐一さんに失礼よ」
綾子さんが微笑みながら窘める。

「お前、忘れ物してたろ。だからそれを届けにな」
「!」
しばらく見なかったかつての俊敏さで、俺の手から届け物を奪う。
「?なんだ、恥ずかしいものなのか?」
そう言って俺が笑うと舞は顔を赤くしながら俺に耳打ちした。

「…誕生日プレゼントだから。お母さんにはまだ見られたくない」
なるほど。
しかし、誕生日を祝うために帰っておきながらプレゼントを忘れるとはな。
よっぽど母親に会うのが嬉しかったんだろう。

…ん?誕生日?はっ!これだ!
俺の灰色の脳細胞が閃く!

「舞、もうすぐ綾子さんの誕生日だよな」
「!祐一、だからそれは…」
珍しく舞が狼狽する。
俺がプレゼントのことをばらすとでも思っているのだろう。
「いや、その誕生日なんだがな、俺達も参加させてくれないか?」
「あら、本当?嬉しいわ」
微笑む綾子さん。
「?私も構わないけど…」
何故俺がそんなことを言い出したのか分からないといった顔の舞。
ふふ、分かるまい、分かるまいて。

「で、その日のプラン、俺に任せてもらえませんか?絶対二人に喜んでもらえるものを
考えてきますから」
「ええ、もちろん。うふふ、何だかワクワクするわね」
綾子さんは乗り気のようだ。
「私も構わない」
舞もO.K.と。

そうして俺は誕生日の日の朝に二人を迎えに来ると約束して帰路についた。


佐祐理さんにこのことを告げると、俺の期待通り佐祐理さんも賛成してくれた。
「佐祐理もお手伝いしますね〜!楽しみですね、祐一さん」
「うむ。だが佐祐理伍長、今回の作戦、失敗は許されん。計画は綿密にな」
「はいっ!参謀次官殿!佐祐理は頑張りますよ〜」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

そして綾子さんの誕生日の朝。
俺と佐祐理さんは舞達を迎えに行くため家を出た。

漸く舞の家が見えてくると誰かが家の前でキョロキョロしている。
「ありゃ舞じゃねーか」
「ですね。ふふ、きっと舞も楽しみにしてたんですよ〜」
子供だな。思いっきり。

その後舞に呼びかけ、綾子さんを呼んで来てもらった。
「さて、全員揃ったところで出発するか」
「はい」
「そうね」
「……」
舞だけが不満そうである。
「祐一、行くのはいいけど何処に行くの」
「そりゃまあ、お前、お約束だが秘密ってやつだろ。な?佐祐理さん」
「あははーっ、そうですねー。ごめんね舞」

本当なら舞は祝う側の人間だから知る権利はあるのだろうが、
今回に限っては舞にも教えるわけにはいかない。
舞に教えることはすなわちこの作戦の失敗を意味するのだ。

その後バスに乗って目的地へと向かう。
バスの中でも舞は何気に不機嫌そうだ。
うう、許せ舞。これもお前のためを思っての事!


さて、バスに揺られること15分。目的地にご到着だ。
「はい到着〜っと」
「……」
「…祐一さん」
舞は無言、綾子さんも俺の名を呼ぶだけで後は何も言わなかった。
でも二人とも笑顔だった。
見ているこっちも思わず微笑み返してしまう、そんな素敵な笑顔だった。

入口には『○○動物園』。
この場所の名前だ。
俺達3人にとっては思い出の場所。
そしてきっと、これからもっともっとたくさんの思い出が生まれてくるであろう場所。

「じゃあ、行こうか、舞。最初は何見る?」
舞を連れて歩き出す綾子さん。
「…お母さんが決めて」
「そう?う〜ん、何から見ようかなぁ」

俺達も川澄親子に続いて歩き出した。

「祐一、佐祐理」
舞が振り返って俺達の名を呼ぶ。
「ん?」
「何?舞」
するとあいつは照れくさそうに、でもこれ以上ない笑顔でこう言った。

「ありがとう」
「「!」」

そしてクルッと前を向くと母が待つ入口に突っ走っていった。


「…作戦成功だな」
「ですね。あはは、舞すごく嬉しそう」
二人で微笑みあう。





もう何年も前に交わされた約束、それを今、実現させよう。

そしてこれからまた、少しずつ、少しずつ思い出を増やしていこう。

心の中に刻もう。

みんながいつも笑って過ごせるように。そして…

「祐一、遅い」
「あははーっ、祐一さん早く来てくださ〜い♪」

「おうっ!」

いつまでも今と変わらぬ思いでいられるように。







あぁ〜とぉ〜ぐゎ〜きぃ〜

ペ「舞SSですじゃ。」

祐「そうか。それはいいが、舞の母親の名前が某有名声優の名前になっているのは何故だ?」

ペ「俺名前考えるの下手なんだ。最初は『舞子』にする予定だったんだが、それじゃあまりに芸がないだろう?」

祐「だからと言ってパクるのはどうかと思うが。」

ペ「うん、俺も書いてて頭の中で舞の母親が香里の声で喋るんだ。なんかパニクッてしまってな。最後の方なんか特に文章ボロボロ、訳分からずになってしまったよ。」

祐「言い訳するなっ!それはお前の才能がないだけだっ!この場を借りて謝罪しろっ!泣いて詫びろっ!ひれ伏せいっ!」

ペ「(ううっ言い返せん)すみません(泣)」

祐「能無しが…(フフン)」

ペ「くっ!悲しみを怒りに変えて立て国民よ!立てよ国民!ジーク・ジオン!」

祐「つまり頑張るって事か」

ペ「うん」

祐「と言ってますので、どうか見放さずに見守ってやってください」

ペ「ご意見ご感想は掲示板へ〜」

(ちなみにペペはちゃんと親の誕生日にはプレゼントを贈ってますよ〜。えっへん。)

(威張るな!)←祐一

ごき♪

…それではまた。